岐阜地学巡検のページ  10.Dec.2003 新設 

大阪の地学の先生たちと一緒に12/6-7の土日に岐阜県の根尾谷断層,名古屋大学犬山地震観測所,鵜沼のP-T境界チャート層,赤坂金生山の石灰岩化石 という豪華な地学巡検 に行ってきました.その報告です.

まずは根尾谷断層から.この断層は1891年濃尾地震の 際,地表に現れた断層として有名です.内陸の地震にもかかわらずMが8を超える巨大地震でした.断層は幾つかのグループに別れますが,全体として左横ずれ の地表変位を示しています.
まずは根尾谷の中という集落の国道沿いの民家脇のお地蔵さんですが,灯籠やお地蔵さんの台座の位置と一番 手前の門石が少しずれています.左横ずれの断層成分を示しているという話です.実際地震のときにはお地蔵さんの台座の下を断層が通って,台座が壊れたそう です.
次に国道の反対側(西側)に看板を見つけました.
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このように畑の境界の植込みの茶株の列が左横ずれの変位を示しています.ずれ幅は最大9.2m,最小 6.0m,平均7.4mと先ほどの看板にありました.M8ですからM7の兵庫県南部地震のずれ幅2mよりはるかに大きいことがわかります.
角度を変えて撮った写真です.茶株の列がクランク型に変形していることがよくわかります.あいにくの雨で 傘を差しながらの見学となりました.
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有名な水鳥(みどり)断層です.濃尾地震といえばここの場所の有 名な写 真がでてきます.右端に断層博物館が建っています.雨が少し小やみになったので,結構遠くまで見えてきて良かった.
遠目にはそんなに感じないのですが,断層崖に近づくとかなりの段差 (6m)があることがわかります.濃尾地震は基本的には左横ずれなのですが,ここでだけ例外的に上下方向の変位が抜きでている場所です.
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断層変位崖わきの新しく作られた断層記念館
記念館の中の断層の模型です.図の三角の地帯が隆起した場所です.水鳥 断層は図の向こう側になります.
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6mの大きな段差を示す掘削壁面.ほとんど垂直なずれであることがよく わかります.下位は美濃帯の堆積岩,上位に乗っているのは河川堆積の礫層のようですね.
記念館脇の喫茶店の名がM(マグニチュード)8というのには笑いまし た.雨の日なのに結構流行っているようです.

ちょっと豪華な岐阜の宿舎に泊まった翌朝,名古屋大学の犬山地震観測所の見学をさせていただきました.案内は名古屋大学の山田功夫教授です.休日を返上し てわざわざ案内していただきました.
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犬山観測所は日本ラインの入り口から少し山に入ったところにあります.この日はわざわざ普段は閉まってい る道路の門の鍵を空けていただいて観測所にお邪魔することになりました.最大6名のスタッフが居た時代もあるそうですが現在は無人となってしまいました.
かつては栄華を誇った研究室で地震計や重力計の記録を見せていただいて,話をうかがう我々.大変地道なし かし素晴らしい精度の観測であることが わかりました.
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これは以前に使っていた記録紙を巻くドラムです.煤書きの時代からのものだそうです.記録する針はLPレ コード用のダイヤモンド針が最適であったとか.そんな所にも良い記録をとるための大変な苦労があったことがわかります.
これはやや長周期の上下動地震計のようです.
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さてまず2つある壕のうち,ひずみ計と水準計が置いてある深い方の壕の中に入れてもらいました.
トンネルの内部は何枚もの扉をくぐって入ります.外部の温度変化を持ち込まないための工夫です.それでも 人間が入るとその発熱で数週間も記録が影響を受けるそうです.
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こちらは石英管伸縮計(右)と水管傾斜計(左)です.壕の内部は1/100度の温度変化しかないそうです が,水が入ってくるのでそれがノイズの原因になるです.
伸縮計は蛍光灯の管のような石英ガラスの筒を溶接して30mの長さにつないでいるそうです.その管を細い ワイヤーでV字型に吊ってあります.服のそででさわらないように気をつけました.
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こちらは伸縮計のセンサー部.片一方の端が地面に固定してあって,こちら側の端は地面から浮かせてあっ て,地面との相対変位を見ています.
こちらは水管傾斜計のセンサー部です.水面の変位を電気的に測定しています.これらはいわば古典的な地殻 変動測定器です.
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それに対してこちらは新世代のレーザー伸縮計です.レーザー光の往復距離(10m)で地殻のひずみを計る ものです.ただレーザー光の波長は温度に依存するので,恒温にする回路が大変だそうです.また光路を真空にするためのパイプを蛇腹でどうつけるかも難しい との話でした.それでもちゃんと完成すると石英棒より3桁は精度が上がるとの話です.
こちらはもう一つの浅い方の壕に安置されている超伝導重力計です.左の本体はまずポンプを用いて電気的に -200度に冷やしたあと,その内部を液体ヘリウムを用いて-4.4度に保つとか.ポンプが止まると10日位でヘリウムが気化してなくなるそうで,ポンプ が動いているかどうかを左の電話にリモートでかけて写真の受話器でポンプの音を聞いてモニターするそうです.スーパーローテクですが素晴らしい発想だと思 いました.

犬山観測所は学生時代と5年程前に一度お邪魔したことがあったのですが,今回は超伝導重力計とレーザー伸縮計が見れて大変参考になりました.休日を返上し て案内をしていただいた山田先生どうもありがとうございました.

さて,お昼までお邪魔した犬山観測所を後にした我々は,昼食後日本ライン近く鵜沼にあるP-T境界のチャート層をみることにしました.この露頭は丸 山茂徳さんや磯崎行雄さ んの著書に良く出てくる有名な場所です.
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日本ラインの木曾川をのぞむ風光明媚は河原に有名な露頭がありました. 中生代のトリアス紀からジュラ紀にかけてのチャートが一帯に露出しています.
これがそのP-T境界層が露出しているという有名な場所です.
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右側が大量絶滅に原因した還元状態(超酸素欠乏状態の海底)を示す黒い 泥質な部分.左側の赤い部分はそれが元に戻り酸化状態を取り戻し,赤鉄鉱を含んで赤くなった部分とされる場所です.
逆向きに見たところ.こちらのアングルが上記著書では有名です.P-T 境界層と勘違いするのですが,どうやらここはそうではなくて,全体はトリアス紀の中期を示すチャートでその中にたまたま還元状態から酸化状態に遷移する部 分が見られるというのが正しいようです.
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研究のためのサンプルを採ったあとが一杯ありました.
そのすぐ右横では赤色チャートが見事な褶曲構造を示しています.
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ここは少し戻った場所で紅白の縞模様がきれいな場所です.
この紅白の縞はどうしてできたのでしょうか?
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さて鵜沼を急いで後にした我々は夕刻近く赤坂の金生山の石灰岩の石切場 に化石を探しに訪れました.ここの石灰岩は写真で左の方向に30度くらいの角度で傾いた層理面を示すそうです.
もう雨は降るは,暗くなるはで大変ですが,その中で必死でヤベイナ(フ ズリナの一種)の化石を探す参加メンバー達.おかげで私は海ユリとヤベイナの化石をたくさん採りました.

赤坂を夕暮れに追われるように後にして,大垣から高速に乗ったころにはもう日がとっぷり暮れていました.往復ワゴン車を運転していただいた,T先生ありが とうございました.往復のカーステで聞かせていただいた山口百恵全集がまだ耳の底でくりかえしています(笑).

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