遠足の地学Series第1弾.2003年度高2遠足の道場〜武庫川〜生瀬を地学的な見地からスケッチしてみましょう. 2003.05/14

<概観>この地域は,六甲山のそびえ立つ花崗岩の奥に広がる400m級の山地を武庫川が急峻なV字谷を作って,削りこんだ地形です.六甲の花崗岩に比べてこの地域を構成する有馬層群(1億年〜7000万年前に巨大カルデラを作る噴火で堆積)は凝灰岩,溶結流紋岩,流紋岩からなり,特に溶結流紋岩,流紋岩は侵食に強く,急峻な地形を作り易いようです.宝塚からほんの少し山手に入っただけでこんな地形が見られるというのは大変興味深いところです.それでは写真を見ていきましょう.<参考文献>兵庫の地質−兵庫県地質図解説書・地質編−,兵庫県,1996

道場駅から千苅水源地に向かう道沿いの地層.有馬層群のなかで唯一堆積岩らしい構造した凝灰岩の地層がこのあたりに分布します.ここではカルデラ湖に堆積したと思われる凝灰質の泥岩が成層しています.
普通の泥岩より少し白っぽい火山灰を多く含む泥岩です.カルデラの直径は15kmと大きく,堆積の仕方からやや深い湖(例えば洞爺湖や支笏湖)が想定されているそうです.
ここは葉理のような縞模様がはっきりしています.色の違いの原因は何でしょうか?この遠足のコースでこのような葉理や層理面のはっきりした堆積岩らしい地層が出てくるのはこのあたりだけでした.
V字谷の奥に神戸市の水源用のダムが作られています.この日は雨の後で放水の勢いが強くきれいな景色でした.
ダムのあらましはこの通り.
さて大岩岳への登りにさしかかると,堆積岩らしい雰囲気は影をひそめ,このような塊状のよくわからない岩石となります.これはどうやら溶結凝灰岩と呼ばれる,カルデラを作った噴火の火砕流ないし軽石流の堆積物のようです.
これは大岩岳から下ってきた林床で見つけた通称「まむし草」(テンナンショウ)が咲いていました.茎のもようがまむしに見えるのでこの名があります.毒草だと本には書いてありますが,−−−. 国語のT先生のよりかかる崖は塊状で,これも溶結凝灰岩の典型的な風化の様子です.実は同じ時代の同じような形成過程の岩石が毎年の恒例行事地学実習の見学地点でも見れるのですが,さて思い出せますか?
大岩岳からようやく岩場を降りきるとアスファルトの道にでて程なく,珍しいロックフィルダムである川下川ダムにたどり着きます.文字どおり岩石を自然の勾配で積み上げた安上がりのダムです.ここは宝塚市の水源のようですね.
ここから下流には図のように道沿いにやや崩れやすそうな崖が続きました.
これは凝灰岩とも流紋岩とも呼べるよくわからない岩石です.これも1億年〜7000万年前のカルデラ形成時の噴出物です.
さて今度は図の武庫川の左岸(下流を向いて左側)の川沿いの岩石を見ます.ちなみに線路の上にある扇風機は何の役目をしているのでしょうか?
こんな風に岩場をへつった場所の岩石です.新緑が美しい!
これは流紋岩と呼んでもいいような塊状の硬い岩石でした.少し暗い色で透明なものが石英の斑晶.白い部分は長石の斑晶です.
少し歩いて別の場所の岩石です.風化した錆色の表面の一部が割れて岩石の新鮮な部分が出ています.
ここではあきらかに岩石の破片(黒灰色)が入っています.凝灰角礫岩と呼べる岩石です.さらにやや暗い色をした部分が少し扁平にボールペンの方向に引き伸ばされているように見えます.高温の火砕流で堆積時に一部が溶けた溶結凝灰岩の特徴のように私(地質,岩石は専門外)には見えるのですが.
廃線跡を歩いたとき,枕木の模様が面白いのでついパチリ.
武庫川の両岸はこんな風に塊状の岩石が崖を作っています.どうもこの溶結凝灰岩は侵食に頑強で,このように険しい地形を作りやすいように思えます.確か地学実習でも,こんな険しい崖を見たような,−−.
さて,武庫川は随所でこのような急流となっています.あたりが巨大カルデラであった7000万〜1億年前はこのあたりはどのような風景であったのか?想像もつきませんね.
塊状の岩石に見事な節理(規則的な割れ目)が描かれています.どのようにしてこのような割れ目ができたか考えてみましょう.地学実習を終えた2年生以上の人は良く似た地形と岩石がどこかにありましたよね?
ところどころで武庫川はこのような淵(水が淀む深み)を作ります.後退していった急流や滝がこのような淵を作ったのでしょうか?それにしても対岸はとりつく島もないような崖ですね.
やっと中国縦貫道の高架下まで降りてきました.振り返ると険しかった武庫川のV字谷の入り口がひっそりと見えています.あんなにハードな遠足の舞台とはちょっと思えないところがまたすごい.さて遠足で汗をかいたみなさんの感想は如何でしょうか?少しは地学の勉強の足しになったでしょうか?

---------------copyright by Y.Okamoto, 2003----------------