ドイツ国際地学教育学会付帯の4日間地学巡検 その1 キールからブレーメン.2006.09/25 2007.03/17update

 キールのホテルのロビーで,巡検のオーナー,キール海洋研究所のS女史と会い,資料をもらう.早速2台のワゴンに別れて出発.この巡検はキールで第4紀 の氷河堆積物と地形を見た後,ブレーメン近郊の恐竜博物館,ずっと南下してドイツのほぼ中央,ローン山系の世界遺産の銀鉱山と古都ゴスラーを見て,さらに 第三紀に噴出した玄武岩溶岩を見て,バイロイトに向かう3泊4日の地質巡検でした.以下にこの4日間の巡検のコースをGPSログからgooglemapに 張り付けたものを示す.(googlemapで動くバージョンは近日公開予定)
 

まず車はキール郊外にある,海洋地質研究所に到着.ここで午前のレクチャーと高校生の研究発表を見ます.ドイツは後述のとおり,理数系の教育に急に力を 入れだしていて,これはいわばドイツ版SSH(スーパーサイエンスハイスクール)やSPP(サイエンスパートナーシッププログラム)みたいな取り組みで す

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巡検の最初はキール海洋研究所の見学と,地元高校生による研究発表を聞 く.大学や研究所のチームが全面サポートする研究だそうで,これで未来の研究者を確 保しようという試みとか.みんな流暢な英語をしゃべるので驚く.ここで最初に英語でいきなり自己紹介などをさせられたのでまごついた. 彼の発表は何か海洋生物と川の汚染の関係の話しだったように記憶する. グラフにエラーバーが見えたので,英語の練習にと数学ですでに統計を習っているのかと聞くと,いやまだ習っていない.データ処理は研究者に教え てもらったという答え.彼はやや足が不自由で,もう一人の女学生が発表をサポート.
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研究所のロビーで今日の日程の打ち合わせ.外はちょっと暑くなってきそ うな晴天.高校生の発表は解りやすい英語だった.元私のクラスにいた留学生のL君も解りやすい英語を話したが,このように英語を操れるのはどうも若い世代 やインテリだけで,古い世代にはまるで英語が通じないことがあることがあとで解る. さて車はさらにキールの街から南方の平原が少しうねりはじめたあたりに 到着.車を降りてしばしの歩きです.あたりは最終氷期のモレーンだそうです.この道沿いにはきれいなフリントの破片が多数落ちていて,そのうち2つ程を 持って帰りました.
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さて,そのなだらかなモレーン堆積物を小さなクリークが横切るところの 小さな露頭が最初のポイント.林の中に入っていくので,一体どんなところに露頭があるのかと戸惑うような場所です. ピート(有機物)層とクレイ(粘土)となぜかその中に礫が入っていま す.ドロップストーンって言っていたような.
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粘土の上層部の色が茶色に変化しているあたりがピート層か. S女史の息子さんが,子供地質学者として活躍.
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あとはただただ平原のような台地を次のポイントに歩きます. 平原が続くあちこちにこのような森があり,その中の一つの中に分け入っ ていくと,キ巡検初日の昼食場所に到着.
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この日の昼御飯は子供用のキャンプ場の管理棟のようなところでピクニッ クとなりました.あらかじめ焼いていてくれたごらんのようなピザ風や卵焼き風のもの です(あとで私の家族がキッシュという食べ物だと教えてくれました).太陽が眩しく,日向は暑いので,陰でごはんを食べました. 環境先進国を自負するドイツは脱原発推進のため,平原で風の強い北ドイ ツでは各所にこのような風力発電装置を建設しました.しかし政権の代わったいま,その根本政策に対する議論がおきているそうです.
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ブレーメンへのルートにある村の教会.よくあるゴシックの尖塔とは少し違います. 氷河期の堆積物が土壌になって赤茶けています.氷河期にはツンドラになっていたところか.その間にもワゴン車はアウトバーンを猛スピードで西へ飛ばしま す.
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巡検最初の宿のブレーメン近くにある,子供向けの科学博物館サイエンス センターについたのは大分陽が傾いた夕方近くになっていました.
この博物館,ドイツといえば物理と化学と思っていたところが驚くこと に,内部の展示はこのように地学に関連したものばかりです.これは古いヨーロッパの海陸分布?
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丸いドームの中が吹き抜けになっていて,螺旋状の階段で各展示室に登っ ていきます.
マグマの様子を展示したものや,
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噴き上がる上がる対流を見せるもの.
地震計と震動台もありました.ヨーロッパでは地震が珍しいのですが,− −.
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ここで初めて間欠泉のモデルの実物を見ました.図で見たことはあるので すが本物が動いているのをみるのははじめて.図は右が上です.
数分に一度,上部の水ためのところへ,下部で熱せられ沸騰した気泡が上 昇し,噴き上げる様子がみれるのですが,写真でわかるでしょうか?
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これはめずらしい.何か液体を積めたガラス球ですが,全体を自転させる と地球の大規模擾乱の様子がみれます.
こちらはおなじみのリップルマークを作る器械.見事なリップルマークが できています.
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人類の歴史を写真で展示したもの.ちょっと日本の博物館の展示と比べる と驚くような写真があったのですが,ーー.
地層を木材の板で説明しようとするもの.とにかくスケールがどれもでか いのがここの展示の大事なところです.
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これはかなりでかい砂山と水を使った侵食堆積装置.三角州などの形成が みれるようになっているようです.
地学関係ばかり展示ですが,ショップにはなぜかウェゲナーの「大陸移動 説」の原本は置いていませんでした.あれば買って帰ったのですが.
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この博物館の珍しいトイレネタ.サッカーゴールと球が吊ってあるのがご 愛敬.それにしてもドイツのトイレはいずれも背の高い人が多いのか,配置が高いのが特徴で,背の低い人はちょっと困ることも?
ホテルのあるブレーメン市内にやってきました.中央駅周辺を超広角レン ズで撮りました.石畳の上を交差する市電の線路が印象的.
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さてブレーメンの旧市内はユネスコ世界遺産登録された町並みです.夕食 を買いがてら,ぶらっと散歩に出ました.これは暮れなずむ何とか教会.名前は忘れました.ここだけ音楽隊が闊歩した中世のたたずまいです.
同じく市中心部を取り巻く城壁の内部,堀端にあるオランダ風の風車と花 壇.いかにも北ドイツの風景です.大阪でいうと中之島のようなところです.
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泊まったホテルの部屋.日本より広くゆったりしています.ウエルカムド リンクも用意してあって,さすがに都会のよいホテルでした. 電話機はさすがにドイツらしくSiemens社製.インターネットが自 由に使えるホテルはこの旅ではなかったかな.

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