試験にでない地学 Series 2002年春待ち号
1945年8月6日早朝,広島へ向かうエノラゲイに伴走する飛行機に,後にノーベル賞に輝くことになる若き原子物理学者Luis
Alvarezはデータ収集のために搭乗していた.ミッションが終わって基地に帰りつくなり彼は,まだ幼い彼の4才の息子に大きくなれば読むようにと手紙
を書いた.What
regrets I have about being a party to killing and maiming thousands of
Japanese civilians this morning -----.
この35年後の1980年,地質学者となった息子Walterは父とともに雑誌「Science」に長文の論文を投稿する.イタリアのK-T境界(白亜紀
と第三紀の境界)の泥岩層に濃集するイリジウムの成因を巨大隕石の落下による凡地球規模の災いによるものと推測したものだった.恐竜やアンモナイトの絶滅
を巡って古来数多くの説が展開されてきたが,Alvarez親子の論文は大きな衝撃を与えた.以来彼らの説を巡る争いは学会を巻き込む壮絶なバトルへと展
開する.伝統的な地質学者達はHuttonやLyellが唱えた「斉一説」(つまり地学現象は身近に見られるようなゆっくりとした現象が積み重なって大き
な変化をもたらす)を信奉していたが,彼らの説はそれへのいわば宣戦布告だったからである.ともあれ,1990年にメキシコ沖で発見された巨大クレーター
の痕跡は彼らの説の勝利を裏付けた.”Giant
Impact”−−巨大隕石の落下により逃げ惑う恐竜たちのカタストロフを老Alvarezは,若い頃目に焼き付いたヒロシマの上空に炸裂した閃光と屹立
するきのこ雲から連想したのだろうか?(Night
Comes to the Cretaceous/J.L.Powelの記述を参考にした)
<ビデオに出てきた火山>
・ス
ルツエイ(アイスランドの海底火山から新島) Cock's tail はマグマ水蒸気爆発の特徴
・ハワイ(キラウエア) 噴水のような噴火,水のように流れる溶岩.粘性の小さな火山の特徴
・桜島 火山雷が印象的.典型的なブルカノ式噴火「The key to the future is the past」
・サ
ントリーニ火山の噴火 紀元前1500年ごろ.
・ポンペイの悲劇(ベスビアス火山,紀元79年) これはあまりにも有名.
・タ
ンボラ(インドネシア,1815年) 日射をさえぎった火山灰がヨーロッパに1815 is the year with out a
summer.をもたらす.
同時代イギリスの風景画家ターナーの絵にある夕焼けの風景.高層の火山灰が異常な夕焼けを見せる.
この時期浅間山(1783),ク
ラカタウ(イ
ンドネシア,1883)など大噴火が相次ぐ.フランス革命は浅間山噴火がもたらした?
・セントヘレンズ(USA,
1980) 山頂直下の地震をきっかけに地すべりが発生.それが原因でマグマと地下水が接触.大爆発を起こしたと推測.山体の1/3を吹き飛ばし,57
名が死亡.