2023年3月北海道巡検(函館,日高方面)その1(函館方面)   2023-03-24

その2(日高方面)はこちら

またまた北海道に巡検してきました.前半が函館周辺.後半が幌満周辺となります.メンバーはいつもの附属中高職員で高校と大学の教え子のS君,Mさん.M さんの大学同級の中高の美術の先生Mさん,大学の昨年度の授業を受けてくれた大学2回生のS君,さらに私の旧友の退職地学教員Bさん(前半の み),S君の指導教官の大学の隕石の専門家H先生です(後半から).前半は8人乗りワゴン車,後半は10人乗りのハイエースで移動しました.いずれも北海 道仕様のフルタイム4WDです.さらに前半には地元の地質に詳しい,wecサイトの主中嶋久さん,さらにその研究仲間の雁沢さん,香河さんにも案内をお願いしまし た.北海道の関係者からは,3月のこの時期の巡検は雪が残り,無謀だと言われたのですが,やはり巡検主催者の一人の私の人徳で(笑),天候のギャンブルは よい方のくじを引きました.この時期としては記録的な温かさで,雪もほぼ露頭周辺から消えて,晴天にも恵まれた素晴らしい巡検(北海道としては3度目)となりました.. 旅行見学のマネジメントの一切を引き受けてくれた卒業生佐藤雄亮君,大学の教え子三橋礼さん,そして案内の企画を立てていただいた地元の中嶋久さんに感謝 します.中嶋さんのWebサイトはこちらです.http://nature.blue.coocan.jp/hakodateindex.htm

まずこのページでは前半(函館周辺)の様子を紹介し,別ページで後半(幌満,日高)の様子を紹介します.

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15日の水曜日に伊丹空港からのJAL便で見えた富士山.かなり遠いはずなのにくっきり.黄砂が少ないからか.飛行はとても安定していて楽しい空の旅となりました. 北アルプス.このルートは日本の背稜地域を横切る素晴らしいコース.眼下の雪山に感動することしきり.この時期の飛行はおすすめです.
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新潟平野で一旦平地の上空から佐渡ヶ島を通過.その後すぐに眼下に見えた鳥海山.ずっと月山だと誤解していた.セントへレンズのような岩雪崩(山体崩壊)のあとがきれいに見える.BC466年だと埋没樹木の年輪解析から,推定されているという(Wiki). 青森を通ったあと,津軽海峡から対岸の函館東方の山が見えているのかと錯覚したが,これはどうも下北半島の西岸みたい.海岸沿いには道がなく,山が崩れて海と接している.
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午 後ホテルに荷物を置いて,早速有名な五稜郭を見学.早く到着したいつもの巡検メンバーB先生と,大学非常勤での最後の授業を受けてくれていた,この4月か ら3回生になるS君.彼は鉄道Fanでわざわざ,新幹線を乗り継いて陸路で到着したとか.彼の行動力と好奇心にはこのあと驚かさせられることになる. 五稜郭は城だと思ってたら,何と奉行所の建物が中心にありました.これは再建されたもの.中もなかなか立派に再現されています.函館戦争の歴史を知る.夜はYouTubeのゆっくり動画で歴史を再確認した.
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函館のホテルの巡検飯の朝食.例によってスーパーの売れ残り値引き品.クーポン付きなのになかなか貧乏旅行の癖が治らない.コーヒーはホテルに備え付けの粉をいただいた. さて翌朝の巡検出発風景.案内者の一人香河さんから教材の紹介.香河さんからはこのあと自作の岩石の標本の入った教材をメンバー全員にいただきました.この日は午後に用事ということで午前中のみ案内いただきました.
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函館から,東に進みまずは,戸井漁港近くの真珠岩がみえる崖(この写真は17日に改めてメンバーで再確認に行ったときのもの) 火砕岩の基質に,チルドマージンがある真珠岩が取り込まれている.日本海が開いたときの,水中噴火の岩石だという.
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こちらはさきほどの場所に近い流紋岩の崖.流理構造が明らか.いずれも新道から外れて旧道に入ったところにある露頭. 名産の昆布が海岸に流れるついている.
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さきほどの戸井漁港から少し東に進んだ,道からまたまた旧道に入った露頭.日浦漁港に近い旧石切場?に露出する柱状節理.関西ではなかなか見れない雄大な露頭です.旧道の切り割りを覆うように柱状節理の壁が左右から迫る場所です.ほんとうに凄い! その海側では,柱状節理が寝ています.溶岩流の流れた水平方向にほぼ垂直にできるという,この節理ですが,この横倒しになった節理はどのようにできたのでしょうか?この石切り場のパノラマ写真は以下です.
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岩石は肉眼では安山岩質のように見えます.地質図には石英安山岩(デーサイト)と記載.サンプルを薄片にして調べてみます. まぐろのしっぽが落ちていました.案内の雁沢さんによると,ここ日浦漁港は青森 県側の大間と並んで,まぐろの水揚げで有名な場所とか.柱状節理とまぐろのしっぽの取り合わせがユニーク.このあと更に東へ,恵山の下の海岸まで辿って, 恵山の溶岩を観たあと,その道を今度は函館の方に引き返しました.
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旧道のトンネルを幾つもくぐって到達した先で,グリーンタフのみられる崖.これは翌日の巡検コースをおさらいしたときの写真か グリーンタフのクローズアップ.堆積岩が専門のB氏は熱心に堆積構造を探していました.
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さらに粗粒玄武岩の露頭などを見学.この時(16日午前中)のみ,この1週間の巡検で唯一雨がぱらつきました.そのほかは本当に晴天に恵まれたよい地質巡検となりました. そして雨が振り出した中,このコースの一番東の橋,恵山の海岸露頭.溶岩が露出する部分.この日のコースでは一番若い溶岩.
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恵山に近い砂浜.磁鉄鉱を含む黒い砂が特徴.かつてはこの豊富な砂鉄を原料に鉄鋼業が栄えた土地だそうです. こちらはその砂鉄を含む黒い砂と白い石英,長石質の砂が不思議なリップルマークを刻む海岸.案内者の一人雁沢さんは,これら海岸砂の専門家でした.ある場所を境に東西で砂の鉱物組成が変わるとか.
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次は函館市街から西に少し行った函館山が海に没するところにある立待岬.近くの石川啄木の墓標をまず訪ねます. 立待岬の看板.デーサイトの海岸です.
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ここの海岸ではおもに流理模様のあるデーサイトが観られました. 案内者の一人,さきほどの雁沢さんに岩石の詳しい話をうかがう.
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この海岸で同行の退職地学教員で堆積岩が専門のB氏が面白いものを見つけました. 埋め込まれた銘板が,粘板岩でその表面に組成の違いによる縞模様と,さらに生痕化石があるというので,一同興味深々.たしかに生痕のようなものが見えます.B氏によるとこれで地層の上下がわかるという,皆さんはわかりますか?(答えはこのページの最後に)

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さらに立待岬から函館山をはさんで反対側の海岸でも火成岩が観られる. こちらには斑晶のきれいなデーサイトが観られました.
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3/16 巡検メンバー+案内者の皆様.下見と案内をお願いした,中嶋さん(写真左端)ありがとうございました.また地元の研究者雁沢さん(右から2人目),香河さん(午前中のみで集合写真がありません.すみません)にも案内をお願いしました. 追伸.実はこ のあとホテルに帰ったのですが,何と3人がこの場所に,巡検バッグやらハンマーやら(上の写真)を置いたまま帰ってしまい,暮れなずむ時刻に車でわざわざ取りに戻りま した.私も忘れた一人です.無事ハンマーとバッグと採取した岩石は手元に残りました.良かった!
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函館に来たからにはこれを観ないでは帰れない.百万ドルの夜景といわれる函館山からの夜景を震えながら見ました.気づいたら7枚近い服を着こんでいました!
3/17追記.早くにこちらに着いていた学生のS君が14日の夜に上がったときは3倍くらいの観光客で,展望台は歩くのも難しいほどの人だったそうだ.我々の16日に,人が少なかったのはWBCのTV中継のおかげのようです.
いつもの高校の卒業生S君に☆がスマホで撮れますよと促され,真似てみました.なるほど非力のiPhoneでも,シリウスと小犬座プロキオンがしっかり映りました.
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函館のホテルは,結構広いツインの部屋を1人で占領.こちらも旅行支援のおかげで安く泊まれました. 17日午前は昨日案内していただいた巡検コースをざっくりと復習.サンプリングなども行う.恵山の溶岩まで行って,昨日の午後に帰るB氏を送って空港まで.昼食は近所でハンバーガー.なかなか美味しい.
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午後は一度行きたかった大沼公園に,車で出かけました.湖面に氷が厚く張っていて驚かされました.1周 1時間ちかくかかる遊歩道を進むうちに,にわか雪が降ってきて,一気にの冬の様相となりました.ところが1周回って戻ってきたときには,ごらんのとおり晴 れてきて,見事な駒ヶ岳の姿が湖面に映りました.湖面の手前だけ氷が解けていて,とても幻想的な逆さ駒ヶ岳を写真に納めました.今回の巡検はこの時期とし ては暖かめの気温といい,とても幸運に恵まれています. これが晴れる直前の大沼公園遊歩道.吹き付ける雪で,一気に冬模様.湖面は厚く張った氷の一部が溶け出している.墨絵のような風景.こんな季節の変化が見れたのは,この時期の訪問だけの特権かも知れないと思った.下記に大沼公園のパノラマ写真を置きました.
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学生のS君は植物にもとても興味を持っていて,大沼公園の遊歩道では観察に余念がありません.今どきの学生さんでこれほど自然に興味を持つのも珍しいと一同感心しました.ちなみに左がミズナラ,右がブナです.ブナの木を初めて身近にみました. レ ンタカーを空港のそばの店に返却して,函館駅までリムジンバスで帰ってきました.駅の近くに摩周丸(かつての青函連絡船)が留められているとのことで,だ れもいない夜に行ってみました.電気がともされてとても印象的でした.1970年代の前半,これに乗って初めて津軽海峡を渡り.北海道に渡ったことを思い 出しました.この旅行をきっかけに.水上勉の「飢餓海峡」を読んだ記憶があります.
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翌日(18日)朝に日高方面に今回は列車で移動.まずはレンタカーを借りる新千歳空港を目指します. 久々の北海道の列車の旅で,昨日大沼公園から見えた駒ヶ岳が今日は違う方向から見えました.火山らしい佇まいです.これより,別ページになります.

※ 粘板岩の上下判定:生痕(巣穴のような構造)が右の方向に伸びているので,おそらく左が上位.


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