こ の春に出向く予定の巡検場所がいずれもジオパークに指定されていて，それはいいことなんだろうけど，指定された途端にサンプリングは許可が必要で許可の取 得に３ヶ月以上かかるとかいう話を聞くと，これって本当にジオの普及に役立っているのかという気が少ししてきた．今日たまたまこの道の大先輩のFBにジオ パークの現状をやや憂いるコメントがあったので，考えてみた．
　批判的に見ると，風景や地形の成り立ちといった学問の世界で共有されてきた人類共通の地味な資産が，高度に発達した資本主義のもとで，「消費される」 「商品」としての価値を見出されたというべきか．今すさまじい勢いで世間で進行するのは，なべて文化や芸術や教養といった上記のそれまで人類の普遍価値と されたものが，急速な勢いで「消費される」「商品化」されていく流れである．
　我々の「教育」業界でも「消費」と「商品化」の流れは受験産業を中心に著しい．別に「消費」や「商品化」の流れがすべて悪いとは思っていないが，たとえ ば部屋中を埋め尽くしたかつての愛読書ばかりの本棚の本を「ときめかない」という理由できっぱり捨て去ってしまう「こんまり」手法には，この「消費され る」「商品」という本質が根強く感じられる．やはりそれは違うだろうという気がしてくる．商品化の価値が低い古典芸能などは潰れてもいいという発想もおそ らくここから来ている．「本や教養を軽視し捨てる人々に災いあれ」と誰かがツイッタでつぶやいていた．けだし名言だと思った．
　こう書いていると，「平成」という時代はモノ作りで商売できなくなってきた日本が，これまで商品化してきてこなかった「教育」とか「芸術」とか「教養」 とか「文化」を人類普遍の価値から切り取って，「消費するもの」，「商品として売るもの」として目をつけて邁進してきた時代だと思えてきた．市場原理はお よそ何でも商品としては扱いが可能であり，それが市場に出ていくことそのものは否定しないが，「よきもの」が売れるのはあくまで消費者が「良き人々」が多 数である場合に限るわけで，消費者が「あくどい人々」に墜すると悪貨が良貨を駆逐する時代になって文明が終わる．