2019年初夏,北海道巡検(幌満,士別を中心に) 2019年10月10日公開,2020年1月18日改訂

幌満編 その2.

さて幌満2日目.いよいよ幌満峡谷を遡る巡検に出発.資料は
https://www.jstage.jst.go.jp/article/geosoc/113/Supplement/113_Supplement_S167/_article/-char/ja/
からダウンロード可能.

※新井田先生にご指摘いただいた部分を改訂しました.改訂部分は紫色で表示しています.

その1はこちら

その3はこちら
 

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巡検前に港に設置した北大の潮位計をまず見学.
超音波で潮位を自動記録するシステム.2011年東北太平洋沖地震の津波はこの高さを優に越えてきたとか.
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当たりの海岸に敷き詰められたかんらん岩.緑色の石材.
クローズアップ.緑色に期待が高まる.
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幌満峡谷の前にまず海岸のジオサイト.ルランベツの角閃岩の褶曲サイト.
このあたりは日高変成帯のグラニュライト,はんれい岩,角閃岩などが分布.
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これはやや赤紫色を帯びた黒雲母片麻岩(グラニュライトの圧砕岩)
日高変成帯の岩石と格闘するS君とIさん.
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次に日高耶馬溪と呼ばれる急峻な海岸沿いの3世代の国道トンネル.明治,大正,昭和と苦難の工事のあとが忍ばれる.
案内の看板.3世代のトンネルが同居するのもとてもめずらしい

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あたりにも昆布干場.そしてその敷石はもちろん幌満かんらん岩!
さらに東北の津波のあと作られたという避難階段.しかし年老いた住民にこれが利用可能なのかという問題を考えた.(追記.これ避難階段ではなく,岩肌にネットをかけたときの作業ハシゴのようです.避難階段は別にあるそうですが,やはり高齢者には避難が難しいというご指摘
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このあたりがの幌尻オフィオライト帯のMetaGabbroと日高変成帯の黒雲母片麻岩(グラニュライト圧砕岩の境界だったか.
右が黒雲母片麻岩(グラニュライト圧砕岩で左がメタギャブロだったか.
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さていよいよ幌満川遡行の始まり.以下資料に沿って巡検ポイントを記載.
山桜が美しい春の幌満路をひたすら奥を目指します.
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まず最初の見学ポイントは地質学会資料巡検ポイントのSTOP3.
ゴヨウマツ記念碑と名付けられたサイト.
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やや山道を下って河原に出ると一面かんらん岩の露頭に感激.スピネル輝石シンプレクタイトを含むレルゾライトが露出するという.
ただ表面はかなり風化してごらんの通り.層状の構造が明らか.採集は禁止場所なのでただ見るだけではあるが.
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次に道路際で巡検ポイントSTOP3と4の中間の場所我々はSTOP3.5と呼んだ場所.
2年前の台風による洪水で岩石表面が削られ好露頭が連続している場所.
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ハルツバージャイトに変わり,シンプレクタイトは含まれないとか.エメラルドグリーンがはっきりと分かる単斜輝石は量が少なくなっているという.
新鮮な部分は淡緑色の見事なかんらん岩の色を呈する.飴色が斜方輝石でエメラルドグリーンが単斜輝石.単斜輝石の多少により多いものがレルゾライト,5%より少なくなるとハルツバージャイトと呼ばれる.
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こちらがSTOP4.専門家の付き添いでのみ観察が可能な場所.しかし,途中の道が洪水で削られ,ロープを頼りに崖を河原に降りた.危険このうえない.体重の重いS君と女性のIさんは途中で待つことに.
命知らずの3人の年寄り(笑)だけが崖を下って,右側の淡緑色のHarzburgiteが左側のやや黒みを帯びたDuniteに変わる境界を探すことに.
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このあたりが境界だったか.写真で左側がDuniteだったように記憶する.しかしDuniteって初めて見るまで憧れていた岩石なのに,露頭で見るとあまりぱっとしない岩石だったのは意外. 上流部を見た所.S君が上で待っている.左側がくだんの崖.
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さてまた少し上流に走って,地質標準試料「JP-2」の採集地点となっている.STOP5.対岸の淡緑色のかんらん岩がそれ.あたりにはポットホールも多数見られる場所がその採集地点だったそうです. こちらがわにはコアサンプルを抜いた跡がびっしり.
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ここでも層状の構造がよくわかる.白い層が斜長石の密集で岩石としては 斜長石レルゾライトという岩石になる.このあたりではもっとも始原的なマントルを構成する岩石とされる.これから玄武岩質のマグマ成分が部分溶融で抽出さ れるとレルゾライトからハルツバージャイトに進化し,さらにそのマグマの通り道で反応によりダナイトが作られるという解釈.つまり中央海嶺部での玄武岩質 マグマとマントル物質の関係を見事に再現しているという解釈に至る.ちなみに斜長石から割り出された岩石の年代は12億年(1.2Gy)と揃うそうであ る.
そんな難しい岩石学的解釈とは別に,いなり神社脇の記念碑.赤の鳥居と葉桜の色が美しい.さらに左側にGeoトイレまで作られていた.
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さて最後にSTOP6.BDH(Babded-Dunite-Harzburgite)の露頭.車をとめた場所から,かなり下流側に歩いた地点.
極端に高いCr含量のスピネルとMgに富むかんらん石で特徴付けられるという.巡検案内では,ボニナイトや高Mg安山岩質マグマに由来するキュムレイト(集積岩)質かんらん岩だと考えられている.
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確かに層状の岩石が転石で見られる.
こちらもそう.狭い幌満川沿いのやや成因の異なるかんらん岩が層状に分布するということは現場でもよくわかった.この層状構造が川沿いに何度も繰り返して見られるのがこの峡谷の特徴.
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早春の美しい花が咲く露頭への道すがら.
さて本日の終点.ダムに到着.
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このダムまでの行程がかんらん岩の標準的な巡検コース.
ダムや雪解けの水を溜めて満杯状態.放流が続いていました.
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帰りの道すがら,対岸で昔から稼業する東邦オリビン工業の巨大な採石場を遠望する.
採石場の施設.時間とアポの関係でこちらには立ち寄らず.
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さて新井田先生のジオラボ近くの河原に戻ってきました.ここでしこたま各種の転石を採集させていただきました.
ジオラボに展示されている岩石.朝に見た日高変成帯の褶曲した角閃岩とグラニュライトの研磨標本.
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こちらは各種かんらん岩の研磨標本.素晴らしいの一語.このあと日暮れまで新井田先生の地質談義を伺う.
各種鉱物標本.小学生から大人まで岩石の研修会で使うとか.大学を退職されたのちも,なお意気軒昂な新井田先生の話は夕刻日が暮れるまで続きました.
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さて夕暮れ迫る時間に車で走ってやっと今日の旅館に到着.
あくまで昭和の臭いが漂う古式な旅館でしたが,海岸がよく見れました.これは翌朝の写真.


これで幌満2日め巡検終了.3日めは一旦えりも岬まで南下して再度北上する旅.その1はこちら その3はこちら
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