5.My Opinion
 
 最近のほんの数年間だけ,科研費のもらえる職場に在職していました.そのときいただいた研究費で出したのがこの冊子です.いただいた税金分だけ仕事をしているかと言われるとつらいのですが,この冊子でまとめた地震計もプロトタイプは毎年のように家でぶーぶー言われながらもPCを自腹を切って購入し,開発したものでした.研究というとすぐ結果を出せとよく世間の人はいうのですが,観測のまねごとをしていると,どんな開発でも自分の納得のいく結果を出すまで10年はかかるような気がしています.当時は地震のデータ1つとってみても,なかなか個人では手に入らず,はるばる中之島の中央図書館に出かけていって,一年前の震源データがやっと載ったばかりの地震月報の各ページを一枚30円払って大量にコピーして帰るという繰り返しでした.地震計の作り方などという気の利いた本もなく(今もないですが),わずかに「振動測定(萩原尊禮著)」という絶版の本を教科書にして,試行錯誤の繰り返しでした.その頃,ふとしたきっかけで,見ず知らずの研究者の方からわざわざ資料を送っていただきました(竹内先生あの時はありがとうございました.今でも感謝申し上げています).私の研究生活のとば口が開いた頃です.地震学会にもこの頃,加入しました.学会というと,紹介者が必要という先入観があったのですが,地震学会は自己申告だけで入会が認められました.この学会には今も大変お世話になっています.
 私は地震観測がたとえば高校生の地学クラブのルーチンワークとし広がることを願ってます.天文クラブがあれだけ繁盛している中で,地球物理的な観測はなかなか裾野が広がらないのが非常に残念です.自分の地震観測の短い経験から言ってもこれは天体観測に匹敵する魅力ある経験だと思うのですが,---(私はかつて天文ファンだったので確信を持って言えます)

 さて,私は衰退していると言われている地学教育を救う近道は良質の教材を開発することだと考えています.専門家に特化した難しすぎる計算ではなく,かといってスケールや相似則を無視した,ただ興味本位で目立つだけの実験でもない−−−.これはなかなか魅力ある,しかし骨の折れる研究分野だと思っています.地学教育については以下の文を.

<複雑系について,あるMLでの発言その1,その2>
<そんなに焦らずに4/23あるMLでの発言>



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