薄片製作レシピ yossi.okamoto at mark gmail.com 2018年12月21日新装2020年1月18日追記.2020年5/10追記.

Part.1はこちら.

Part.2 ※このページの情報は仕上げ摺りとカバーガラスの接着以降を除いて少し古くなっています.自作岩石カッター,研磨機など.下記のリンク先を先に見てください.

5.岩石切断機で再度切断(岩石カッターが用意できないときは,自作切断機の作り方のページをご参考に)

接着した岩石を再度切断機で薄く切る.


厚さにはそのときによりむらがあるが,切断機の構造上あまり細かい調整ができず仕方ない.


このとき,忘れずに岩石の種類をガラス板に直接マジックでメモする.これを忘れると岩石の種類がわからなくなる.

6.再度荒ずリ(これも包丁研ぎ機を改良した岩石研磨機のページを参考に).

これは鉄板(#150)か,下記のような包丁研ぎ機を用いる.砥石は粗いものと交換する.また水の供給を忘れずに.砥石のみで摺り,砂は供給しない.念のため,防護眼鏡をつけること.


これで,ほぼ0.2mmくらいまで削る.砥石が新しいうちは角を利用して,どんどん薄く削る.砥石が古くなると角が丸くなるので,こんどは表面についてきた外側のアール(丸み)を利用して全体を薄くするように削る.これには少しコツがいる.

花崗岩系は特に硬く,また早く透明になるので厚さがわかりにくい.ガラスを通して削る火花が見えるのでどこを削っているかの目安にする.
玄武岩系は透明にならないので,全体の色を見て薄くなる程度でやめる.研ぎ機はすぐに削りすぎて岩石がなくなりガラスが露出するので要注意.

下記がほぼ所定の厚さに削ったところ.薄片の角が少しとれてきたところでやめにする.岩石は潮岬の斑糲岩がメイン.


7.中ずり(#300)と仕上げズリ(#800と#1500)

 #300の中ズリは一番大事な過程.ここでおおよその厚み(0.05mmくらい)まで一気に減らす.見極めは長石の干渉色が黄色から灰色に変化するあたりまで.
ここで手を抜くと次の#800がとても時間がかかることになる.薄くなってくるととくに片減りが目立ってくるので,この#300でかならず,厚い方に力を かけて,片減りを修正することが重要.ここでも顕微鏡で厚い部分(干渉色が派手)を確認して,厚い方に指を当てて厚い側を優先的に摺る.


#300の終了時の様子.このような花崗岩系は早く透明になるので厚さの見極めが極めて難しい.常に顕微鏡のクロスニコルで石英,長石の干渉色を見て,厚さを確かめることが重要.

※ ここまでの過程は包丁研ぎ機を使用した器械研磨の方が大変楽になるので,できればそちらをおすすめしたい.器械研磨の詳細は下記ごらんください.
http://seagull.stars.ne.jp/2019_Thin_Section/index_part3.html
http://seagull.stars.ne.jp/2020_Thin_Section/Grinder_P/Grinder_P.html

以下は器械研磨のページから飛んでこられた方への手摺りの詳細です.



仕上げズリは,#800でほぼ所定の厚さ(0.03mm)にする.見極めは石英,長石が完全灰色になるか,ごくわずかにクリーム色を帯びるくらい.明白に黄色であれば厚すぎる.
石英,長石が含まれない岩石(たとえばかんらん岩)は薄片の厚さの見極めが大変難しく,経験が必要.

長石が灰色になり適正な厚みの薄片(赤色花崗岩)


長石が色づいてまだまだ厚い薄片(斑糲岩)#300でひたすら頑張る!


#1500は薄くするのではなく,#800の粗い砂目を取る目的で,力を入れずに数分摺って終了.


#1500の終了時.素人の手摺りだとどうしても周囲が薄くなり,最終的に丸くなる.これを角が四角いままで終了できたら,もうそれはプロの仕事!


ここまでくればもう完成間近!焦って取り扱い時に落として割って泣きをみないこと!(何度も経験あり!)


8.カバーガラスをかけて,完成へ.

カバーガラスを用意して,薄片上のゴミを指先ではらう.UV硬化型接着剤を塗布するが,カバーガラスの形の応じて,長辺に2ヶ所滴下する(その後色々と試行して,サイコロの5の目のように最近は滴下している,追記.さらに最近はX字型に接着剤を塗布).あとはカバーガ ラスの中央を押さえて,左右に揺らし,泡を追い出すと同時にカバーガラス全体に接着剤を行き渡らせる.この作業は蛍光灯下よりもLED照明の方がいつまで も固まらずやりやすい.また昔のカナダバルサムは細かい泡が入りやすかったが,UV硬化型にしてからは泡の入る頻度がぐっと減った.


あとは日光(紫外線)にしばらく当てる.
自動代替テキストはありません。

雨が続くなど日光を使えない時用に,ネイルドライヤーを買ってもよい(Amazonで1000円以下).これだと180秒程度でOK.紫外線を含むので直接見ないように.


そのあとマニキュア除去剤(アセトン)をティッシュに染ませ,表面の不要な接着剤をふきとり,さらに岩石名や産地を記したラベルを貼って完成.
ラベルは,WordやExcelで書式を作って,裏に糊のついた,ラベル専用プリンタ用紙で印刷すれば,それを細かく切って使いやすい.


完成後はできれば,薄片箱(Amazonで2000円くらい)を買って保存しましょう.薄片は使ってこそ意味があります.ぜひ授業などで活用ください.


Copyright © 2018-2020 Yoshio Okamoto All Rights Reserved.